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nighty night

 

纏足のような職場と環境をはなれて、

今も信じられないけれど、別の地に生きている。

 

浮足立つこともなく、自分でも意外なほど平然と、淡々と。

転勤族の性のようなものなのかもしれない。

今いるところに一日も早く適応するための、

コントロール力のようなものが働くのかもしれない。

出勤中に標識を見上げるたびに、それでも夢の中にいるような、

不思議な感覚になる。

友達と離れるのは、寂しいけれど寂しくなかった。

会いたい人には遠かろうと会いにいくし、会いたくない人には近かろうと会わない、

そういうものだと知っている。

私に故郷はないけれど、

わたしはわたしが望むところへ、どこにでも住めるという自由がある。

 

10年ぐらい前、いろんなことがあって、

私は大学を自主退学して、一時期フリーターだった。

時間が自由に組めて、それなりに楽だったけれど、

なぜかいつも宙ぶらりんで、何も持っていない、という劣等感が募り、

初めて会う人に、いまなにをしてるの?と訊かれるのがすごく嫌だった。

今はよかったのか、わるかったのか、

国家資格の有資格者となり、あんまり向いてないな、いつか辞めたいなと思いながらも

それに生かされているという何ともいえないジレンマとたたかっている。

それでも社会と何らかの形でかかわっている、というのは

あの頃のわたしが切望した未来だろうと思う。

今の生活にまだ慣れてはいないけど、

でも今の家と美味しいごはんがあれば

私はまだ生きていけると思う。

 

でも、わたしはまだ

もっともっと遠くに行きたい。